広く情報を届けるには?企業のnote活用法って? デザイナーによる情報発信術

広く情報を届けるには?企業のnote活用法って? デザイナーによる情報発信術
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2020/01/28 08:00

 noteを運営するピースオブケイクは、個人のみならず、企業やチームで情報発信をするクリエイターが増えてきたことをうけ、「デザイナーの発信」をテーマに『note designer meetup』を開催した。本記事では、デザインについて日々発信している、baigie 枌谷力さん、Tokyo Graphic Recorder 清水淳子さん、OFFRECO 山下正智さん、LINE 中谷豪さんによるライトニングトークの様子をお届けする。

デザイナーが情報発信をするメリットとその裏側にある5つのからくり

[LT1]baigie 枌谷力さん「デザイナーが情報発信をする100のメリット」

 枌谷さんは冒頭、「そんなに苦労せず考えることができた」という、情報発信における100のメリットを提示。その裏側にある5つのからくりについて、自身の経験を交えながら解説した。

5つのからくり

  1. 情報の磁力
  2. 噴水効果
  3. 見えないクチコミ
  4. 時空を超える
  5. 成長サイクル

からくり1:情報の磁力

 情報はそもそも、情報を発信する人に集まっていく、と枌谷さん。情報を発信するとそれを受信した人から情報がフィードバックされるが、それは必ずしも1対1の関係とは限らない。Twitterのように1対nで発信をした場合は、そのうちの何%かの人から情報が返ってくるだろう。もちろんそこには、有益な情報もそうでないものも交じっている。

「こういうことがネット上やリアルの場でたくさん起こっている。すると、Twitterを見てお話ししてみたいと思っていたんですと声をかけてもらったり、いろいろなフィードバックが返ってくる。こうやって集まってきた情報によって、自然と情報通になれるんですよね。無理に勉強しなくても勝手に詳しくなれるというのが、ひとつのメリットだと思います」

からくり2:噴水効果

 現在、17~18人ほどのbaigieは全員クリエイターで、マーケティング部門や営業部隊はとくに持っていない。にもかかわらず、問い合わせの件数は毎年平均およそ400件にのぼる。また採用においても、転職サイトやエージェントを活用せずに、自然な採用ページのエントリーだけで2019年は70人ほどの応募がきたという。20人弱の規模でありながらこの数は珍しい。なぜこのような状況を作ることができるのだろうか。

「僕はこれを噴水効果と呼んでいます。まずいちばん下に会社があり、そのうえに当然ですが良質なサービスがあることが前提です。そのサービスを運営していると、さまざまな知見やノウハウがたまっていくので、それについて情報発信をしていくと、そこに同じ業界のファンのような方々がゆるやかに生まれます。すると噴き上がったものがリードや採用の応募者という形でそれぞれ落ちてきて、顧客や新たな社員として会社に還元されていく。これがまた良い組織や良いサービスへとつながっていきます。つまり、情報発信をしていると良いことがやってくる、というわけです」

からくり3:見えない口コミ

 枌谷さんは、baigieのオウンドメディアのアクセス数について解説。ある1ヵ月でサイトへの流入数をPCでセグメントしてみると、もっとも多いのはソーシャルではなくダイレクトだったという。

「このダイレクトに含まれるのは、ブックマークやアドレスバーに直接入力した人と以前は言われていましたが、これはリファラルではわからない、社内のメールやチャットツールなんですよね。つまり、情報発信をしてSNS上で生まれている反応はごく一部で、その裏にはデータには見えない動きがあるということ。こういった行動は、SNSだけでなくオフラインでも起こっていますよね。情報発信をすることで得られるものの大きさを実感できると思います」

株式会社ベイジ代表取締役 枌谷力さん
株式会社ベイジ代表取締役 枌谷力さん

からくり4:時空を超える

 オウンドメディアでは、直帰率が80%や90%であることも珍しくない。その数だけ見るとオウンドメディアがマーケティングにとってあまり効果がないように見えるが、そうではないと枌谷さんは指摘する。

「直帰するけれど、時間差で再訪問してコンバージョンにつながることもあることを意識しなければいけません。我々だと、最初にコンバージョンした人の10%から20%くらいは、最初の訪問はブログやオウンドメディアだったりするんですよね。こうやってセッションをまたいだデータを集めていくと、時間をおいて効果が出ていることも多くある。これが時空のうち、『時』の部分です」

 「空間」についても、baigieのオウンドメディアにおける実際の数字を紹介。「ユーザー数のおよそ50%が東京だが、残りの半分は東京以外。あらゆる地域の人と出会ったり話すきっかけが生まれるというのも、情報発信のすごさだと思う」と枌谷さんは語った。

からくり5:成長のサイクル

 情報発信をするためには、ネタ探し→コンテンツを考える→情報を発信する→評価される→うれしくなる、といったサイクルを回す必要があるので、情報発信をしている人は「自然とスキルアップしていく」と枌谷さん。最後にこれらを「習慣化」することの大切さに触れ、パートを締めくくった。

「もちろん、これはいきなりできるようになるわけではなくて、少し頑張ることも必要です。大切なのは『習慣化』。これが上手くいけば、情報発信をしているだけでスキルアップすることができるはずです」

言葉にするときは“半熟”状態で

[LT2]Tokyo Graphic Recorder 清水淳子さん「デザインを言葉にすること」

 デザインリサーチャー、グラフィックレコーダー、多摩美術大学の講師という3足の草鞋をはく清水さん。Tokyo Graphic Recorderとして、2013年から取り組んできたグラフィックレコーディングの研究や実践の取り組みから得た気付きを共有した。書籍の刊行や大人になってから通ったという東京藝大の修士過程のエピソードから、言葉にするタイミングと方法、そして今後の抱負について以下のように話した。

「何か理論を学んでやってみる方法もひとつですが、デザインを言葉にするときに必要なのは、勘と経験と度胸でとりあえずやってみることだと思っています。そこで得た気付きなどを、あとから言葉で固めていくやりかたが私は気に入っています。

ここで注意すべきは、固めすぎないこと。『これが絶対の真理なんだ』と決めてしまうと対話する余地がなくなってしまう気がするので、固めすぎずほどほどに。半熟状態を目指すといいと思います。

半熟の状態で伝える方法はいろいろあります。noteはすごくいいですね。思いついたことをその日にアップして、皆さんから少しコメントが来る、という感じがちょうどいい。あとはラジオも好きですし、雑誌などの取材も積極的に受けます。話し言葉を違う人が自分の話を言葉にしてくれるというのは勉強になります。

デザインリサーチャー/グラフィックレコーダー/多摩美術大学情報デザイン学科講師 清水淳子さん
デザインリサーチャー/グラフィックレコーダー/多摩美術大学情報デザイン学科講師 清水淳子さん

グラフィックレコーディングをはじめ、さまざまなビジュアリゼーションというのは流行りものではなく、文字や言葉や映像のように、普遍的に人々のコミュニケーションに貢献できる手段かなと感じています。引き続き、実践と研究を頑張っていこうと思います」

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